2014年4月30日水曜日

ネット依存は子どもの問題じゃない

2014年3月6日公開の勤務先Facebookページへの寄稿記事からの転載です。1122文字。

「なぜ急にネット依存が問題になってるの?」
「どうしたら良いの?」
という疑問に割と素直に答えていますね。

「子どもは周りの大人の様子を見て学ぶ」
という指摘は元々、広島大の匹田先生にいただいたものです。

そして大人のソーシャル依存は結構根深いとも思います。
最後の段落はまず自分自身に言い聞かせるために書きました。

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[子どもをネット依存にさせないために]

「ネット依存」というキーワードが注目を集めています。

いわゆる「ネット依存症患者」というのは、昼夜逆転の生活でオンラインゲームを楽しむ若年利用者が、その典型的な姿でした。

ところが、スマートフォン普及の影響などで、その裾野が急に広がったのではないかと懸念されています。内閣府の最近の調査でも「青少年の平日のネット利用時間が3年前の2倍近くに」という状況です。

なぜ「スマートフォン普及=ネット依存の裾野が広がる」なのでしょうか。

1.スマートフォンは「いつでもどこでもネットにつながる超小型パソコン」です。決まった場所で使うパソコンとは異なり、移動中やスキマ時間など「利用できる時間帯」が飛躍的に増えます。

2.スマートフォンの場合は、家族が一台ずつ所有することも珍しくありません。子どもたちは大人の目が届かないところで、好きなことを楽しめるわけです。

3.スマートフォンでは、ゲームなど娯楽アプリや動画コンテンツなど「閲覧系のお楽しみ」に事欠きません。コミュニティアプリで自分のことを気軽につぶやいたり、メッセージアプリで友だちとのやり取りを楽しんだりも人気です。閲覧・交流のどちらも時間がかかる遊びです。

こうした背景から「スマートフォンを持つ=インターネットの長時間利用」になりやすいわけです。もちろん「長時間利用=依存」ではありませんが、依存傾向への入り口という面も含め、長時間利用がもたらす弊害が心配されています。

子どもたちの長時間利用を防ぐために、普通の保護者には何が出来るのでしょうか。

自制心が十分に育っていない段階では、個人所有のインターネット機器を安易に持たせない、持たせた後は「充電はリビングで。スマートフォンなどの機器は寝室に持ち込まない。」といったルールを決めることなども有効でしょう。

しかしその前に、保護者自身がインターネットとのつき合い方を見直すことが必要です。

小さな子どもたちは、日々、周囲の大人の振るまいを見ながら育っています。

ですから「食事中にスマートフォンを操作」させたくないなら、保護者が率先して「食事中はスマートフォンの電源を切る」や「別室に片付けておく」を実行するのです。
(すぐそばで着信通知があったら、中身が気になるのが人情ですからね)

食事中に限らず、就寝前の一定時間など、インターネット機器から離れると心穏やかでなくなるようであれば、子どもたちの状況を憂う前に、われわれ大人が依存状態なのかもしれません。

自らの意志でオンオフの切り替えをハッキリとさせられる、上手なインターネット利用のあり方をこれから意識的に探していきたいですね。

(高橋大洋/インターネット利用者行動研究室)


2014年4月28日月曜日

ゲーム機の保護者管理機能は最初が肝心

2014年2月22日公開の記事から転載。1012文字。

この

「子どもの持ち物にしないのも一つのやり方」

というアイデアですが、わたくしが個人的に思いついたものではありません。

元は子どもネット研の笹井先生からヒントをいただき、昨秋からの保護者向け講座で取り上げてみたところ、保護者管理について考えるよい題材になりそうだということで、こちらの記事でもご紹介したという経緯でありました。

ちなみにこの3DSは実機確認用の私物です(笑)

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[ゲーム機はオトナのものに]

 もうすぐ3月。4月の進級や進学を機に、我慢させていたわが子にもそろそろゲーム機を買ってあげる頃合いかしら、と考えている方もいらっしゃいますよね。

 そして、いまやそうした機器はインターネットにつながるのが常識ですから、何の備えもなく使わせるのは避けたいもの。

 ところが、「誕生日プレゼントで子どもに買ってあげたゲーム機。機器の設定でフィルタリングなどの機能制限をしようと思っていたのに、結局、機会が無いままになってしまって…」と話される保護者が少なくありません。

 確かに、キレイにプレゼント包装された新品のゲーム機を子どもが大喜びで開封したそばから、「まずは機能制限するからね」と取り上げるのは、親子ともに、かなりのストレスになりますよね。

 そこで最近の保護者向けの研修会では、「お子さんにゲーム機を買ってあげるのをやめましょう」とお話ししています。

 これは、何も子どもにゲーム機を与えるなということではなく、「所有者はオトナであると宣言する」だけで、色々と良いことがあるよというご提案なのです。

 お目当てのゲーム機は、あくまでも「お父さんのもの」として買う。(もちろん「お母さんの」でも大丈夫!)そして子どもにはそれを貸してあげるという形にするのです。

 貸し出すといっても、厳密に「使いたいときだけ借りに来いよ」とまでする必要はなく、子どもに預けっぱなしでも構いません。

 でも、あくまでも持ち主はお父さん。
 だから、お店から買って帰ってきたゲーム機を箱から出すのもお父さん。
 最初に電源を入れるのもお父さんになります。

 ごく自然に、「インターネットへの接続を制限する」などの保護者管理機能(メーカーによって、「保護者による使用制限機能」とか、「ペアレンタルコントロール」とか呼び方が少し違います)を設定することが出来るわけです。

 そして子どもに機器を渡す時には、「お父さんが使いたくなった時は、すぐに返してもらうからね」という一言も忘れずに。

 こうすれば、無理なく機能制限をかけた上で、子どものゲーム機の利用の様子を時々確認することも出来るようになります。その後、お子さんがプライバシー情報の発信を控えられるなど、ネット上で自分の身を守れるようになってきたら、少しずつ機能制限を緩くしていきましょう。

 ゲーム機はオトナのものに。
 ぜひお試しください。

(高橋大洋/インターネット利用者行動研究室)

2014年4月25日金曜日

学校向けのネットパトロールはその役割を終えたか

2014年2月1日に公開した勤務先Facebookページからの転載です。
1252文字。(投稿を重ねるにしたがい、字数が増えております…)。

「もう学校裏サイトの時代じゃないでしょ?」
「LINEやSNSが人気なのに、パトロールで何を探せるの?」

といった素朴な疑問が聞こえてくる今日この頃。
実態をごぞんじの学校現場や教育委員会の担当者はともかく、自治体の財政部署や県会議員などのみなさんにはぜひ一緒に考えて頂きたい、「パトロール実施の今日的な意義」をカンタンにまとめた記事でした。

その一方、先進的な自治体の取り組みは、「見回り」だけでなく、「教育」や「相談」機能も連動させた複合的なものへと移りつつあります。

そのあたりの実例についても、これからもっと
紹介していきたいですね。

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[ネットパトロールの効果を上げるには]

 掲示板、ブログ、プロフィールサイトなどを巡り、地域の子どもたちによる書き込みの中から、不適切なものを見つけ出す作業を、ネットパトロールと呼びます。

 ピットクルーのような専門企業が自治体教育委員会や私立学校からお引き受けするケースだけでなく、自治体職員や地域の保護者ボランティアによる対応も盛んです。

 パトロールの結果、インターネットへの書き込みには適さないプライベート情報の書き込みなどが、今でも数多く見つかります。多くの場合、教育委員会などに集約された後、各学校に適宜提供され、具体的な生活指導、生徒指導の材料として役立てられています。

 その一方で「子どもたちのインターネット利用の中心が、メッセンジャーアプリや会員制の交流サイトなどの閉鎖空間に移った」という視点や、検出される不適切書き込みの件数が漸減傾向にあることから、「パトロールを実施する効果が以前より薄れたのではないか」との指摘も見られるようになっています。

 しかし、子どもたち自身の本音が赤裸々に語られるのは、学校の教室や家庭ではなく、むしろインターネット上なのではないかという見方から、子どもの状況を把握するための貴重なヒントがネットパトロールの結果からも得られるとする教育現場の声は少なくありません。

 実際、子どもたちの不適切な発信がメッセンジャーなどの閉じた空間だけに限られることは珍しく、その様子が、ブログサイトや大手交流サイト上などの公開されている場にも漏れ出ているケースは少なくありませんし、そうした公開の場への書き込みは、後々大きな問題につながりがちです。

 もちろん、ネットパトロールの効果を上げるための工夫の余地はまだまだ多く残っていそうです。

 例えば、パトロールの結果を学校ごとの個別指導の材料だけに留めることなく、ヒヤリハット事例として共有するなど、地域内での教育啓発に積極的に生かしていくこと、保護者や地域の方などから学校に寄せられた相談や、ネットトラブル相談窓口に入ってきた事例から、パトロールの範囲(対象サイト)を機動的に変更していくような仕組みづくりが考えられます。

 またピットクルーでも、専門企業としてパトロール業務の一切をお引き受けするだけでなく、パトロール自体は外部に委託しないという方針の自治体職員や地域の保護者ボランティア向けに、パトロール担当者養成研修メニューのご提供も始めています。(写真は先日開催された地方自治体向け研修会の様子です)


 地域や学校のそれぞれの状況や事情に合わせた取り組みが、これからも子どもたちのインターネット活用を支え続けることを信じて、ピットクルーも新規サービスの開発を続けていきます。

(高橋大洋/インターネット利用者行動研究室)

※ピットクルーのスクールネットパトロールサービス導入自治体の担当者インタビュー記事もご覧ください。
http://www.pit-crew.co.jp/service/schoolreport_01.html

2014年4月24日木曜日

任天堂、ソニーとの協業による携帯型ゲーム機の実機体験付き研修会の様子

2014年1月22日に公開した原稿の転載です。1008文字。

無償講師派遣型の安全教室を大々的に展開できる携帯電話事業者とは違い、ゲーム機メーカーなどでは、こうした指導者向け研修会などへのピンポイントの登場がどうしても主になります。

実機に触れたり、詳しい人から直接説明を聞くと解消する不安も多いように思います。
昨年度はたまたま経済産業省の委託事業の枠組みの利用で実現しましたが、こうした機会を無理なく増やしていくための創意工夫を、これからも続けていきたいところです。

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[大人には新鮮!携帯型ゲーム機の実機体験]

 子どもたちのインターネット利用環境がパソコン/携帯電話に限られていたのはもう昔のこと。機器の急速な進化と普及の結果、携帯型ゲーム機でのインターネットデビューが当たり前の風景になりつつあります。

 最新型の携帯型ゲーム機では、一人で遊ぶだけでなく、目の前の友だちとも通信しながらの対戦が出来るようになっています。さらに無線LAN(Wi-Fi)に接続することで、インターネット越しに世界中のユーザーと対戦するオンラインゲームなども簡単に楽しめます。

 またパソコンと同じように、自由にホームページを閲覧する機能も搭載されていますから、家庭の方針や子どもの成長度合いに合わせ、不要な機能はオフにするなど、機器上の保護者管理機能を正しく設定してから子どもに使わせることが必要です。

 ところが最新の携帯型ゲーム機でどのようなことが出来るのかも、保護者管理の機能の存在も、ゲーム機に馴染みの少ない大人には、案外知られていません。

 ピットクルーでは平成24年度から、経済産業省委託事業の一環として、各地域でインターネット安全利用の教育啓発に関わる、地方自治体等の認定した指導者向けに研修会を実施しています。
 今年度は、任天堂およびソニー・コンピュータエンタテインメントの両社にご協力をいただき、一部会場にて携帯型ゲーム機の実機体験プログラムを試行的に実施しました。



 当日の受講者の中には、最新の携帯型ゲーム機に触れるのは初めてという方も少なくなく、その画面の鮮明さや各種動作のスピード感には新鮮な驚きの声が聞かれました。

 また機能制限などの保護者管理機能についても、実際に自分の手でその設定方法や動作を確認することで、今後、教育啓発を進める上で具体的な手応えを得ることができたという受講者が多くいらっしゃいました。


 ピットクルーでは今後も関係事業者との協働を図り、こうした機会の拡大に努めていきます。

(高橋大洋/インターネット利用者行動研究室)

※任天堂株式会社
保護者のみなさまへ http://www.nintendo.co.jp/parents/index.html

※株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント
ネットワークを安心してお使いいただくために http://pscom.jp/anshin
ペアレンタルコントロール機能・解説ページ http://pscom.jp/safety

2014年4月23日水曜日

船橋希望中学校(東京都世田谷区)の家庭教育学級で講演

またまた勤務先Facebookページの過去投稿からの転載です。

2014年1月17日に公開した949文字の原稿。

同校PTA役員のみなさんによる企画でお呼ばれしたわけですが、その熱意には動かされましたね。

その後の同校の取り組み成否も気になるところです。

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[家庭教育学級での講演]

 東京らしい冬晴れに恵まれた1月11日土曜日、世田谷区立船橋希望中学校で開かれた家庭教育学級にお邪魔してきました。

 今回の家庭教育学級のテーマは「親が知らないネットの世界/わが子を見失わないために」。スマートフォンなどを購入するきっかけとなる進級進学シーズンの前に、その利点欠点についてあらためて考える機会を持ちたいという思いから、冬休み明け早々のこのタイミングに合わせて企画された同中学校PTAの取り組みの一つです。

 また、単発の講演だけではなく、同校保護者を対象としたインターネット利用実態アンケート調査も事前に行われ、子どもたちのインターネット利用機器や利用サービス、家庭でのルールなど、「同じ学校の他の家庭ではどうなのか」という保護者が知りたい情報の共有が試みられているのも特徴です。

 この日、図書室に集まったのは約60名。同校の保護者、関係者だけでなく、周辺の小学校からの保護者や校長先生の他、地域の青少年指導員の方などの参加もありました。
 おおまかな進行は、初めに講師から、子どもたちのインターネット利用の最新状況と、家庭での取り組みのヒントについてお話をさせていただいた後、参加者が5−6名ずつのグループに分かれて、子どものインターネット利用時間などについての意見交換をするというものでした。

 保護者にとって、日常会話の中でわが子のインターネット利用を話題にするのは難しいものかもしれませんが、同じ講演会に参加した後であれば、日頃の色々な悩みや疑問が自然に聞けるものです。
 期待に違わず、グループワークはなかなかの盛り上がりを見せていましたし、受講者のアンケートの中にも、「子どもと話をしてみたい」「ネットに詳しくなくても親に出来ることがあると分かって良かった」といった前向きなコメントが多く見られました。

 フィルタリングの利用を呼びかけるなどの形で、これまで行政主導で行われることの方が多かった保護者向けのインターネット利用に関する教育啓発ですが、今後はこうした、地域に根ざした自主的な学習の機会がより充実していくことが期待されます。ピットクルーでは、経験豊富な講師の派遣などで、そのお手伝いをさせていただきます。

(高橋大洋/インターネット利用者行動研究室)

2014年4月22日火曜日

勤務先Facebookページへの寄稿を始めました

すっかり更新が途絶えてしまったこのブログですが、ヨソで原稿書いてたのも一因ですかね…。

でもこのまま放っておくと散逸してしまうのはミエミエなので、アーカイブ目的ってことで、差し支えないものはこちらにも適宜収録しておきたいと思います。

記念すべき第一弾は2014年1月16日に、勤務先のFacebookページに寄稿した517文字の下記原稿です。

それにしても写真が暗くて怖い。

文中、「3月末までの期間限定」とか書いていますが、結局4月以降も継続しております。
どこまで続くのかしらね…。

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[インターネットの安全、効果的な利用について考える]

サイトパトロール業務の専門企業として知られるピットクルー。
サイト運営事業者からの委託で、利用規約に違反する投稿の監視や削除対応を行ったり、自治体教育委員会からの委託で、児童生徒の利用実態を調査することが、全国650名のスタッフの日常です。

ところが、長年こうした業務を続けていると、同じ失敗をしてしまう利用者が多いことに目が行きます。またインターネットでの大きな失敗は、残念ながらその時限りでは終わらず、本人のその後の人生にも長きに渡って深刻な影響を与えかねません。

そこでピットクルーでは、専門部署を設けて、安全かつ効果的なインターネット利用についての研究と教育に取り組んでいます。その最新の名称は「インターネット利用者行動研究室」。

これまでは、講師としてお邪魔した各地の研修会などでしかお目にかかることができませんでしたが、今日から3月末までの期間限定で、このFacebookページ上でも、研究室担当者の日常や、最新のトピックなどをお知らせしていくことになりました。

みなさまからのコメントを楽しみにしています。どうぞよろしくお願いします。

(高橋大洋/インターネット利用者行動研究室)