2014年5月7日水曜日

ドコモ ケータイ安全教室の教材が大幅リニューアル

2014年4月21日に公開した、勤務先Facebookページへの寄稿文転載です。923文字。

ひょんなご縁から、NTTドコモさんの安全教室の教材制作に関わりました。

出前講座の開講数/受講者数も桁違いですが、リーフレットの方も、毎年、それぞれの冊子が数十万部ずつ印刷されるという意味では、国内最大級の参考書になるのかもしれませんね。

印刷物としての配布は、安全教室を受講した団体などに限られているようですが、PDFで全文データを入手出来ますから、ちょっとした自主的な勉強会などにも使えるのかなと思いました。

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[ドコモ安全教室教材のリニューアルをお手伝い]

 NTTドコモの「ケータイ安全教室」は、受講者数が毎年90万人を超える、国内最大規模の教育啓発取り組みです。このたび、その教材が大幅に改訂されました。

 新装なったのは「入門編」「応用編」「保護者・教員編」。それぞれのスライド教材とリーフレット(ポイントブック)のPDFデータは、いずれも既にドコモウェブサイトの下記ページからダウンロードが可能です。
https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/csr/social/educational/safety/manual_download/index.html

 今回の大幅改訂は、「携帯電話からスマートフォンへの移行」「その他機器によるインターネット利用の増加」「メッセンジャーアプリの利用トラブル増加」といった環境の変化を受けたもので、多くの学校や家庭が直面しているであろうトラブルを網羅的に収録するとともに、受講者の属性に合わせた分かりやすい解説が加えられています。

 もちろん、スライド教材の方は、ドコモ安全教室のインストラクターが使うためのものですから、利用者が通読するだけでは全ての疑問は解決出来ないかもしれませんが、リーフレットの方は、それ単体でも十分に読み応えがあり、役立つものです。

 ちなみに、ドコモの講師派遣が無償ということはよく知られていますが、最近同社が配布している教育啓発冊子(リーフレット)に、同社の社名がほとんど登場せず、宣伝色が極力排されていることをご存知の方は、案外少ないようです。
 このあたりも含め、ぜひ上記ページから最新版リーフレットPDFをダウンロードして、確かめてみてください。

 日頃、ピットクルーでは、さまざまなインターネット利用トラブル実態についての知見と、青少年から大人までを対象とした幅広い教育啓発経験を蓄積しています。

 今回はその蓄積が認められ、第三者の視点でアドバイスするという形にて、初めてドコモさまの教材制作のお手伝いをさせていただきました。



 これからもより多くのみなさんのお役に立てるように、日々の業務に取り組んでいきます。

(高橋大洋/インターネット利用者行動研究室)


2014年5月2日金曜日

書評:わが子のスマホ・LINEデビュー 安心安全ガイド(小林直樹)

2014年4月15日に公開した勤務先Facebookページへの寄稿文の転載です。1551文字。

著者の小林記者は、子どもネット研の保護者講座の実地取材に来られて、本文中では、その一部コンテンツのご紹介もいただきました。

それにしてもこういう書籍は、具体的に書けば書くほど、サービス側の変化(改善)に置いていかれてしまいますから、その賞味期限が短くなりがちなのが難しいところですね。

一応、アマゾンへのリンクを貼っておきます。
(アフィリエイトリンクです 笑)

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[書評:わが子のスマホ・LINEデビュー安心安全ガイド]



変化の早いインターネットの世界。子どもへの機器の与え方に自信が持てる保護者は多くないのが現実でしょう。とはいえ、いざ勉強しようと思っても、書籍は情報が古かったり、インターネットでは全体像を見渡せるようなまとまった形になっていなかったり…。

そんな保護者向けに、最新の「知っておくべきこと」「知りたいこと」をコンパクトにまとめた書籍「わが子のスマホ・LINEデビュー 安心安全ガイド」(日経BP社)が書店に並び始めています。

著者の小林直樹氏は、企業によるソーシャルメディア利用の失敗(いわゆる「ネット炎上」問題)では、とても多くの事例に精通した日経BP社の記者です。「子どものネット利用問題」についての書籍の多くが、教育現場に近い立場の著者によって書かれているのと違い、ジャーナリストの視点で問題を広く捉え、限られたページ数の中に重要度の高い項目をバランスよく取り上げているところが本書の大きな特徴です。

まず第1章では、2014年春の時点で多く聞かれる質問を、上手く10個にまで絞り込んでいます。

たとえば、今さら周囲には聞きにくい質問である「ガラケー(従来型携帯電話)とスマホは何が違う?」や「LINEはなぜ無料で使えるのか?」の解説は、新しいサービスや機器になじみの少ない保護者にこそ必要なものでしょう。

また「LINEにまつわる事件、トラブルがよく報じられるが、危険なのか?」の項目では、事件報道の特性を指摘した上で、本当に警戒すべきリスクを冷静に論じているのも、保護者にとって有益なものと思われます。

続く第2章では、あまたあるスマートフォン利用にともなう問題を、「歩きスマホ」「ワンクリック詐欺」「ネット依存」「ネットいじめ」「リベンジポルノ」という、身近かつ被害が深刻なもの5つに絞って簡潔に解説。

いずれも具体的な事例を挙げつつも、煽りすぎない書きぶりと、具体的なアドバイスで、全体像を把握する際のよい糸口になりそうです。

その後、第3章「わが子を守るスマホ設定」と第4章「わが子を「炎上」させない対策とルール」、第5章「トラブルを防ぐSNS設定」では、それぞれ「保護者ができる子どもたちの利用環境整備」「利用者である子どもたち自身の気づきが必要な点」「トラブルの場となる人気サービスの利用についての具体的なアドバイス」という三つの切り口から、いずれもきわめて現実的なポイントが列挙されています。

本書の各章のまとめには、「保護者はこう行動しなくてはいけない」という決めつけがほとんどありません。必要なデータや手がかりを示した上で、判断はそれぞれの家庭に任せるというスタイルが徹底されています。

また「保護者がするべきこと、出来ること」という視点で書かれてはいながらも、子どもたちのインターネット利用問題に関わらざるを得ない学校の先生方や、行政職員にとっての、課題を正確に捉えるための入門書としても有用そうです。

本書を通読して、「知ってるよ」とか「自分の思ってた通りだったよ」という方は、子どもたちのインターネット利用問題に「詳しい人」または「少し詳しい人」です。周囲の大人や子どもたちが困っている時には、ぜひ手助けをお願いします。

中には、字数が限られた本書だけでは満足出来ない方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、みなさんの近くにいるはずの「詳しい人」「少し詳しい人」を探して、質問してみてください。

本書の中でも取り上げていただきましたが、ピットクルーでも、保護者や教職員の研修会などへの講師派遣で、「少し詳しい人」を増やすお手伝いをしています。本書が一人でも多くの方に読まれることを願っています。

(高橋大洋/インターネット利用者行動研究室)

2014年5月1日木曜日

「スマートフォンは夜9時まで」について考える

2014年3月20日公開の記事(勤務先Facebookページ)から転載。1202文字

予想通りというべきか、同様の問題意識を持つ自治体に波及している様子が、続報として報じられています。

■小中学校 広がるスマホ制限 「長時間使用は異常」「帰宅時安全確保は」首長も賛否
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1404/22/news038.html

あくまでも、子どもたちの長時間利用の背景にある「同調圧力に負けてズルズル」という点に着目した苦肉の策であり、呼びかけの当事者ほど、「これだけで全てが解決する」とはみじんも信じていないだろうと見ています。

だから「スマートフォン以外にも機器はあるよね」云々と高みの見物をしている場合ではなく、長時間利用の構造を理解できるのか、自らを律することが出来るか、試されてるのは、子どもたち以前に、われわれ大人全員なんですよね。

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[「持たせない」から「夜9時まで」への大きな前進]

携帯電話の利用トラブルが社会問題化した2008年以降、「子どもには携帯電話を持たせない」という運動に取り組む地域が複数生まれました。

それから6年、今度は「スマートフォンは夜9時まで」という地域ぐるみの呼びかけが報じられ、話題になっています。

■スマホ 午後9時以降ダメ 刈谷の全小中学校
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/aichi/news/20140317-OYT8T01038.htm

ネット上の反応は、当初「学校が口出しすることではない」「問題の先送り」「実効性に疑問」といったネガティブなものが目立ちました。
しかしその後、当事者の声が伝わり始め、趣旨に賛同するポジティブな受け止め方が広がりつつあるように見えます。

■子ども21時でスマホ禁止、刈谷市が大胆な試み。
http://japanese.engadget.com/2014/03/17/21-line/

なんといっても今回の決断は、以前の「持たせない」から大きく前進しています。

以前の「持たせない」の背景には、子どものインターネット利用にはリスクをとるほどの価値は無いという判断があったはずです。
しかし今回の呼びかけの背景には、その後、インターネットが生活を豊かにするための基盤になりつつある中で、ある程度の制約をつけた上であれば、子どもに使わせる方が現実的という判断があるわけです。

「持たせない」とは違い、「夜9時以降禁止」ではインターネット利用リスクはゼロにはなりません。そもそも施策の徹底自体も難しいでしょう。しかし、あえて今回のような呼びかけを選んだ。そこに、地域の大人たちの的確な現状認識と強い決意を感じます。

有識者からは、取り組みを成功させるための課題がさっそく指摘され始めています。

■「夜9時以降ケータイ・スマホ禁止!」刈谷市学校の保護者への要請の意味と課題
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takeuchikazuo/20140318-00033660/

今後、刈谷市の内外からさらに多くの知見を集め、元々のねらいが見事に達成されることを信じています。

また、今回の報道を見て、「わが街でも!」と議論に弾みがつく地域が、これから他にも増えることでしょう。

前回の記事(https://www.facebook.com/pitcrew.co.jp/posts/815088355184717)でもお伝えした通り、その時は、子どもだけに呼びかける運動だけでなく、スタートの時点から「大人自身も振り返る機会にする」=「インターネットとの上手な距離のとり方を模索する」という要素もぜひ取り入れていただければと考えます。

微力ではありますが、機会をいただければ、お手伝いもさせていただきます!

(高橋大洋/インターネット利用者行動研究室)