2014年5月2日金曜日

書評:わが子のスマホ・LINEデビュー 安心安全ガイド(小林直樹)

2014年4月15日に公開した勤務先Facebookページへの寄稿文の転載です。1551文字。

著者の小林記者は、子どもネット研の保護者講座の実地取材に来られて、本文中では、その一部コンテンツのご紹介もいただきました。

それにしてもこういう書籍は、具体的に書けば書くほど、サービス側の変化(改善)に置いていかれてしまいますから、その賞味期限が短くなりがちなのが難しいところですね。

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[書評:わが子のスマホ・LINEデビュー安心安全ガイド]



変化の早いインターネットの世界。子どもへの機器の与え方に自信が持てる保護者は多くないのが現実でしょう。とはいえ、いざ勉強しようと思っても、書籍は情報が古かったり、インターネットでは全体像を見渡せるようなまとまった形になっていなかったり…。

そんな保護者向けに、最新の「知っておくべきこと」「知りたいこと」をコンパクトにまとめた書籍「わが子のスマホ・LINEデビュー 安心安全ガイド」(日経BP社)が書店に並び始めています。

著者の小林直樹氏は、企業によるソーシャルメディア利用の失敗(いわゆる「ネット炎上」問題)では、とても多くの事例に精通した日経BP社の記者です。「子どものネット利用問題」についての書籍の多くが、教育現場に近い立場の著者によって書かれているのと違い、ジャーナリストの視点で問題を広く捉え、限られたページ数の中に重要度の高い項目をバランスよく取り上げているところが本書の大きな特徴です。

まず第1章では、2014年春の時点で多く聞かれる質問を、上手く10個にまで絞り込んでいます。

たとえば、今さら周囲には聞きにくい質問である「ガラケー(従来型携帯電話)とスマホは何が違う?」や「LINEはなぜ無料で使えるのか?」の解説は、新しいサービスや機器になじみの少ない保護者にこそ必要なものでしょう。

また「LINEにまつわる事件、トラブルがよく報じられるが、危険なのか?」の項目では、事件報道の特性を指摘した上で、本当に警戒すべきリスクを冷静に論じているのも、保護者にとって有益なものと思われます。

続く第2章では、あまたあるスマートフォン利用にともなう問題を、「歩きスマホ」「ワンクリック詐欺」「ネット依存」「ネットいじめ」「リベンジポルノ」という、身近かつ被害が深刻なもの5つに絞って簡潔に解説。

いずれも具体的な事例を挙げつつも、煽りすぎない書きぶりと、具体的なアドバイスで、全体像を把握する際のよい糸口になりそうです。

その後、第3章「わが子を守るスマホ設定」と第4章「わが子を「炎上」させない対策とルール」、第5章「トラブルを防ぐSNS設定」では、それぞれ「保護者ができる子どもたちの利用環境整備」「利用者である子どもたち自身の気づきが必要な点」「トラブルの場となる人気サービスの利用についての具体的なアドバイス」という三つの切り口から、いずれもきわめて現実的なポイントが列挙されています。

本書の各章のまとめには、「保護者はこう行動しなくてはいけない」という決めつけがほとんどありません。必要なデータや手がかりを示した上で、判断はそれぞれの家庭に任せるというスタイルが徹底されています。

また「保護者がするべきこと、出来ること」という視点で書かれてはいながらも、子どもたちのインターネット利用問題に関わらざるを得ない学校の先生方や、行政職員にとっての、課題を正確に捉えるための入門書としても有用そうです。

本書を通読して、「知ってるよ」とか「自分の思ってた通りだったよ」という方は、子どもたちのインターネット利用問題に「詳しい人」または「少し詳しい人」です。周囲の大人や子どもたちが困っている時には、ぜひ手助けをお願いします。

中には、字数が限られた本書だけでは満足出来ない方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、みなさんの近くにいるはずの「詳しい人」「少し詳しい人」を探して、質問してみてください。

本書の中でも取り上げていただきましたが、ピットクルーでも、保護者や教職員の研修会などへの講師派遣で、「少し詳しい人」を増やすお手伝いをしています。本書が一人でも多くの方に読まれることを願っています。

(高橋大洋/インターネット利用者行動研究室)

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