2011年1月6日木曜日

児童ポルノ問題はブロッキングで解決するのか

ええと、本記事のタイトルへの答えはもちろん「ブロッキングだけでは解決するわけがない」ってことです。
残念ながら、効果的な対案とか解決策を提案できるわけでもないのですが、自分の頭の整理も兼ねて、最近の個人的な経験について振り返っておこうかと、本エントリーを起こしてみました。

そもそも、児童ポルノのインターネット上での流通抑制に関しては、フィルタリング事業者(の渉外担当)という立場上、平成20年度の総合セキュリティ対策会議(テーマはずばり「インターネット上での児童ポルノの流通に関する問題とその対策について」)に呼ばれたのに始まり、その翌年からの児童ポルノ流通防止協議会など、大切な公的会議の末席を続けざまに汚してきたわけですが、まあ「利用者の同意が大前提となるフィルタリングはあくまでも対策の脇役でしかありませんよ」という点を控えめに主張する立場に過ぎませんでした。

ところが、昨年11月の京都府の会議になぜか呼ばれて、「(2)インターネットにおける児童ポルノ規制の状況等について」のパートで、フィルタリング以外も含めた「インターネット上での・・事業者等の取組み概略」という広いテーマについて説明することになりました。

色々と悩みましたが、当日は、京都府さんのウェブページにも掲載いただいた資料、「インターネット上での児童ポルノ流通抑制のための事業者等の取組み概略」( PDFファイル ,236KB)に沿って、

「現在、インターネット業界が進めている施策は、大きく分けて三つで、それぞれこのくらいなら期待できる」
「でもインターネット上での流通抑制策としては、全体のごく一部しかカバーできないと考えるべき」

という、なんだか元気の出ない報告をしたわけです。

(その前に、インターネット上での同問題の全体像などについては、財団法人インターネット協会さんが説明くださるというので、そこは省略)。

また、個人的な見解と但し書きをつけつつも
「インターネット上での流通コントロールというのは、インターネットの元々の仕組み上、一番効果が上がりにくいのだから、それ以外の施策を優先度を上げて考えるべきではないか」
とあえて付け足しをさせていただきました。

この最後の指摘に対して、委員の方々からの質問は、すぐに「それはつまり単純所持禁止すべきということ?」方面に移ってしまったわけですが、実はそこの是非の優先度は低くて、根本的な戦略の不備にもう少し議論の焦点が当たるべきと考えています。

たとえば、そもそも「児童ポルノ問題」って、被害児童の救済と、(総セク報告書にも指摘のある)「児童ポルノの流通によって児童を性欲の対象として捉える風潮を助長するという問題」のどちらに重きを置くべきなのか。

まあここ最終的には、規制法の保護法益をどちらにするべきなのか、という議論にもなるらしいのですが、個人的には法学の基礎的な教養に欠けるため、具体的な話には深入りしないように、参考URLだけを付けておきます。

■奥村弁護士とアグネス・チャンの往復書簡
http://togetter.com/li/14563

で、この中に既に「個人的法益説は破綻している」との奥村先生のお言葉はあるものの、それでも個人的には、社会的法益説にはあまり与したくないところなんですよね。

というのは、たとえば日頃取り組む「フィルタリング」に対しても「○○の風潮の助長を防ぐ」的な期待を、フィルタリングの効能としてお持ちの方が少なからずいらっしゃいます。
お気持ちとして分からないでもないんですが、でもそれは結構難しいのではないかなーと。

なぜならフィルタリングって、あくまでも個々の利用者それぞれの価値観に合わせた、自己防衛のための手段でしかない(何を制限するか強制されるとすればそれはフィルタリングじゃなくて、ブロッキング・・・)。
だとすれば、(あくまでも原理主義的に言えばですが)「風潮を防ぐ」のような効能からは一線を画すことになるはずなんですよね。

それに個々の被害者が本当の意味で救済されていない現実が延々と続くのであれば(いや仮定法でなく、それが続いているというのが現実と見るべきでしょう)、それこそが「好ましくない風潮を助長する」ことになるのではないか。
だから少なくとも、まず先に個人的法益を優先ということにして、社会法益はあくまでもその後に来るように設計、運用するべきなんだろうなと。

いずれにしても、インターネット関連業界が取り組んでいる「三つの対策」は、今年の春から夏にかけて、それぞれ急速に具体化してくるところ。
でも、それと並行する形で、根本となる戦略をもう一度スッキリさせてほしい。

たとえば、国が進める児童ポルノ排除総合対策のご担当者には、おかしな形で再度の政治問題になる前に、リーダーとしてぜひ強力な軌道修正をお願いしたいという期待を表明して、本エントリーを締めくくりたいと思います。




その他、個人用の覚え書きとして以下のリンクも掲載しておきます。

■ブロッキングにまつわる最近の関係者の動きのおさらいについてはこちら↓
http://www.geekpage.jp/blog/?id=2010/12/13/1

■ブロッキング、検索結果非表示、フィルタリング以外の対策については、こちら↓(の後半)にて、専門のお二人によって言い尽くされているところ
http://togetter.com/li/22352

■前提となる法や執行面のアンバランス等については一通り指摘が済んでいる様子(また奥村先生ですけど)
http://www.app-jp.org/modules/topics/index.php?content_id=9



#今日は本ブログ初?の、「ですます調」で書いてみた。書きやすさ優先で、当面は混在で行こうか。

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