2010年12月20日月曜日

フィルタリング提供義務の中身は再定義されるべき

朝日に続き、毎日にも報じられたところを見ると、進みつつある青少年インターネット環境整備法の見直し議論では、最終的に「スマートフォン向けのフィルタリング提供義務」が、やはり大きな論点の一つということになりそう。

この「スマートフォン」では、コンテンツプロバイダを含めたビジネスモデル(エコシステムというべきか)も、端末製造事業者と携帯電話事業者との力関係も、それぞれかなりの程度に違うことから、これまでの携帯端末と同じように、全て「携帯電話事業者だけにフィルタリング提供義務を強いる」という落としどころでは難しいだろう。

かといって、単純に端末製造事業者に全てを託すのは、法が直接の影響を及ぼしにくい海外事業者がかなりの割合を占めることもあり、また、全体として青少年向けのフィルタリングビジネスが、無償化の大きな流れの中に飲み込まれつつある中で、実質的なコスト負担の面でも、やはり簡単ではないはず。


それではどうすればよいのか。

たとえば、法の中での「フィルタリング」という言葉の定義を見直してみるというのは、十分に検討の余地があるのではないか。

現時点で、素直に「フィルタリング」という言葉から想像されるであろう、実際にアクセスをする都度、リアルタイムでブロック(閲覧の制限)がかかるというフィルタリング技術には、緊急性の高い脅威に対する有効性の評価が高い(たとえば、ウイルス感染サイト、フィッシングやワンクリックなどのオンライン詐欺サイト、残虐画像掲載サイトなどを、利用者の目に触れさせる前に確実にブロックできれば、その存在意義は大きいだろう)一方で、それ以外の分野では、弊害も大きいとして疑問の声も少なくはないところ。
またその弊害については、技術の中身やインターネットサイトの実状に詳しくない保護者からも、「見せないだけでは子どもは育たない」として、直感的に理解?されている部分もある。

そうであれば、そういった狭義の「フィルタリング」だけでなく、青少年にとって不適切なサイトへのアクセスを、より間接的に抑制する技術・対策も、広義の「閲覧防止策」として公に認め、最終的には利用者の選択に託すというやり方もありそうだ。

たとえば、既にゲーム機等に搭載されている「ペアレンタルコントロール」「ペアレンタルロック」機能。このうち、インターネットサイト閲覧に関連する部分として、いずれのゲーム機でも、ブラウザ機能をオフにすることが可能(暗証番号で管理)になっている。

または、一部の携帯電話事業者からも提供されている「アクセス先サイトの閲覧ログ確認機能」。元々が、青少年の不適切利用対策のために作られた機能ではないため、現時点での使い勝手に不満は残るだろうが、法人市場向けフィルタリングでの感覚からすれば、うまく子どもへの説明が出来る保護者であれば、ある種の抑止効果・教育効果を期待することも出来るはず。

現時点では「フィルタリング提供」の一類型として、これらの施策はあまり明確には定義されていない。しかし、改めてその功罪や、リアルタイムで制限できる「フィルタリング」との違い(段階的な意味も含めた役割分担など)が公の場でハッキリとすれば、関連事業者もそれぞれの提供内容について、現実的なコスト感の中での改善の余地は十分あろうし、利用者(保護者)に対しても、より多様で現実的な対策の選択余地が増えることになるのではないか。

今後、法の見直し議論の舞台となっている、総務省の青少年インターネットWGや経産省のレイティングフィルタリング連絡協議会研究会などで、このあたりの議論が正面から取り上げられるように、機会を見つけて提起していきたい。

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